「ルルーがすすめただけあるメシだったな」 「うん! すっごくおいしかったよねーっ」 日が落ちたのち。やっとのことで宿に戻ったアルルとシェゾは、レストランで晩御飯を食べた。レストランって言っても、宿と同じ建物に入ってる、宿のお客専用のお店だ。 ちなみに宿は、こじんまりとした2階建て。シーサイドなんとかホテルって名前のわりに、外見はまさしく「宿」。アルルやシェゾが旅の途中で利用するような。だから、どーやらレストランに一番お金をかけてるみたい。 でもまあ、食い気の多いふたりのことだから、ご飯がおいしけりゃ、とりあえずそれで満足だ。 「あ、そーだ。ボクお風呂に入ってくるね」 部屋に戻ると開口一番、アルルが言った。「宿」のくせに、各部屋にはお風呂がついてたりする。これも、ルルーがおすすめする理由かもしれない。 ――かなり小さいお風呂だけど。 「シャワーあびただろ。帰ってきてすぐ」 「まだ髪の毛がベタベタするんだもん。気持ち悪いでしょ」 「わかったよ。……ひとりだとヒマだから、早く出てこい」 「うん♪」 アルルはバスタオルを手に、意気揚々とお風呂場へ行っちゃった。 残されたシェゾはホントにヒマでヒマでどうしようもない。こんなときにはいつも読んでる魔導書もない。アルルとバカンスってことで、全部置いてきちゃったのだ。 部屋の中をいつまでもうろうろしてるわけにもいかなくて、古くさーいソファになんとか腰を落ちつけた。想像してたより、ずっと柔らかい。体が沈み込むにまかせて天井を見上げると、ふたつみっつ、シミをみつけた。 昼間の疲れもあって、視界がぼや〜とかすんでく。すると、シミがだんだんルルーの顔に見えてきた。 「……生き霊じゃないだろうな」 1回そういう風に見えちゃうと、どうしてもそういう風にしか見えなくなっちゃう。他のシミも、サタンに見えたり、ウィッチに見えたり……おもしろくなくて、シェゾは目を閉じてしまった。 「シェゾーっ、かばんとってー」 ひょいとアルルが廊下から部屋をのぞきこんだ。 「……シェゾぉ?」 返事がないので、身を乗り出してみる。――シェゾはソファで眠っちゃってるみたいだ。 「……」 何かを思い付いたみたいで、アルルはそーっとシェゾに近づいてく。バスタオルを体に巻きつけただけの、すごく無防備なかっこ。ゆっくり歩いていって、シェゾの足と足の間にある隙間に、ちょこんと座り込んだ。 ソファにもたれてるシェゾの胸に、アルルがもたれる。背中からぬくもりが伝わってきて、なんとなく、ほっとする。――すっぽり収まっちゃったからかもしれない。アルルよりも大きな体に。 男の人のカラダに。 「何してる」 「うひゃあぁっ!?」 急にシェゾが動きだして、アルルを両腕で囲っちゃった。シェゾが寝てると思ってたアルルはびっくりして、シェゾの顔を確認するのが精一杯。するとシェゾの目はしっかりと開いている。寝ぼけてるようには見えない。寝起きの悪すぎるシェゾが寝ぼけずに目を覚ますなんてありえないから、やっぱり起きてたってことみたい。 「シェゾ!? 寝てると思ったよ!」 「お前が遅いから瞑想してたんだ。あまりにもヒマだったからな」 「ちぇーっ、そうと知ってればこんなコトしなかったのに」 アルルはぶーぶー言いながら、シェゾの腕を指先で軽く叩いてる。 「……アルル、服はどうした?」 「パジャマ着ようと思ってたんだけど、お風呂場に持ってくの忘れてた」 アルルの答えに、シェゾはふーん、と微妙な反応。長いつきあいのおかげか、アルルはとっさに身の危険を感じた。 「ボ、ボク、パジャマ着てくるっ!」 「いらん」 「わきゃ!」 立ち上がって逃げようとしたアルルだけど、シェゾの腕の中から出ることはできなかった。結局シェゾの胸に逆戻り。 シェゾはアルルを抱きかかえてひざに乗せると、すぐにバスタオルをひっぺがしてしまった。さすがシェゾ、こういうことには動きがはやい。 「せっかくのバカンスなんだ。お楽しみがなきゃ、な」 「バカンスじゃなくても、いつも楽しんでるじゃないかあっ」 「いつもとは雰囲気が違うだろう? ――そんなに暴れるなよ」 「ひゃ……」 お風呂上がりのほてった体は、シェゾのひんやりする手が触れただけで、大きく反応した。温度差にアルルは抗議の声を漏らしたけど、シェゾにはもちろんどこ吹く風。きれいな指先をアルルのおなかで存分に躍らせた後、彼女のちっちゃい胸を不意に攻撃しはじめた。 「……んっ」 「気持ちいいのか、アルル」 「そっ、そんなコトきか――あぅんっ」 耳に吹きかかる、あま〜い吐息。思わずぎゅっと目をつむったアルルの胸を、シェゾが面白がりながらいろいろに形作ってしまう。 シェゾの襟首につかまりながら、呼吸をどんどん荒くさせながら、自分の体がもっと熱を帯びていくのをアルルは感じてる。血の巡りがよくなって、感覚が鋭くなって、胸の一番先が2本の指で挟まれてるのとか、おなかの下の方がきゅーってなってるのが、イヤってほどにわかっちゃう。 (シェゾの首しか見えてないのにさ、なんでわかっちゃうんだろ?) そんなアルルは、その首もとで自分が出してる息と声が、シェゾの興奮をバージョンアップさせちゃうことにも気づいてない。 「はあ、あぅ、ぅんっ、……あ、や、あぁっ!」 手がアルルから離れて、息を整えようとできたのも、ほんのちょっとの間だけのこと。シェゾはアルルの片足をひざ裏から持ち上げると、足のつけ根にもう片方の手を伸ばした。 そこはさっきからきゅーってなってたところだから、かゆいところに手が届いたみたいで、ホントに気持ちいい。アルルの声はますます激しくなっていって、アルルが気持ちいいってことが、シェゾにもすんなり伝わる。 でももっと気持ちよくなれるってことを、アルルは知ってる。 「まったく、いつものことながら……幼児体型のくせしてな。すごいぞこの中」 「あん、あっ、あっ、は、しぇ……ふぁっ……しぇぞぉっ」 「ん? どうした?」 シェゾの問いかけに、アルルはもう答えることができなくて、かわりに腕をシェゾの首に巻きつけた。 「――あぁ」 シェゾはくっと笑うと、アルルを床へ下ろした。ソファの前にある背の低いテーブルで、膝に力が入らないアルルが自分の体を支えられるように。 それからアルルの背中側から肩越しに、ちょっと強引なやり方でキスをさせられる。唇をはなしたシェゾは、これ以上ないってくらい楽しそうに顔を歪めた。アルルにはそれがなんとなくおもしろくなくて、怒ったような視線でシェゾをにらんだ。でもシェゾにはこれが逆効果。 「アルル、知ってるか」 アルルの腰に手を添えて、シェゾのほうへ引き寄せて。 アルルの背中とシェゾのおなかがくっつくようにして。 「そういう目つきは、男を扇情的にするだけだ」 一気にアルルの中へ入ってきた。 「はああぁん!!」 「その目、他の男にするなよ。特にサタン」 「……んっ、う、んあぁっ」 「返事は?」 「ひゃ、はぁっ……わかっ、わかったよぉお」 空気を取り入れるのにもいっぱいいっぱいなのに、アルルは必死で言葉を絞り出した。そんなアルルの様子に気をよくして、シェゾの動きがはやくなる。 「あはっ、は、あ、やぁ、ダメぇっ」 「何がダメだって?」 「いっ……っ、……っはぁ」 「なぁ、アルル。言ってみろ?」 肌と肌がぶつかり合って、乾いた音がアルルの耳の中で反響してる。 音はアルルをますます溺れさせて、 シェゾの動きを不規則にして、 でもって、お互いに頭の中が、白い光でチカチカし始めてる。 「あっあぁっ……、ん! いじ……わる……ひゃぁうっ」 「そんなのいつものことだろうが」 まったくもってそのとおり、なシェゾのつっこみ。けどそれも、てっぺんが近いアルルには聞こえてないみたいだ。 テーブルに貼りついて、がくがく揺らされる自分の体を何とか支えてる。もう声は止まらなくて、止めようとも思わなくて、胸いっぱいにきゅーっ、と来てるたくさんの気持ちを、その声に乗せてシェゾに伝えようとしてるみたいで。 「ふあっ……、あ、や、……っん、んああぁっ」 「アルル……」 「あっあっあっあっ、あっ、ああああああっっ!」 「――っく」 一番長くて一番熱い声と共にアルルがてっぺんに到着しちゃうと、アルルの中はぎゅぎゅっと縮んでしまう。こうなるとただでさえ狭いアルルの中は、とんでもないことに。 我慢できなかったのか、我慢する必要がないと思ったのか。 アルルの中が縮んだことで、シェゾも一気にてっぺんまで駆け上っちゃったみたい。シェゾからあふれたものが流れ込んで、アルルの体もまな板の上の鯉のようにびくびく跳ねた。 「うわ〜、汗だく〜っ。せっかくさっきお風呂に入ったばっかりだったのにぃ」 シェゾに放り投げられてそのままだったバスタオルを、アルルがちょこちょこ歩いて取りに行く。目には流した涙の跡があるし、体もピンク色のまんま。 「だったらもう一回入ればすむことだろう」 「そうだけどー」 そういうことじゃないんだよ、とシェゾの反応にアルルは膨れちゃった。 「……」 「どしたの、シェゾ」 「いや――」 拾ったバスタオルをまた体に巻きつけようとして、アルルがシェゾの視線に気付いた。アルルの体を、上から下まで、じっくり観察してるみたいだ。 「焼けたな」 ぼそっと、一言だけつぶやく。 アルルも確認してみれば、ピンク色の肌に水着の跡が白と黒で残ってる。 「シェゾと違って元気よく遊んでたもん」 「流されてたくせによく言う」 「う……。それは、シェゾが一緒に遊んでくれなかったからで……」 つい今し方、大人のアソビが終わったばかりだというのに、アルルがせがんでいるのは子供の遊び。 俺をいくつだと思ってる。 あきれたシェゾがしっしっと投げ槍に手を振ると、アルルのほっぺたがもっと膨らんだ。膨らませたまま、わざと大きな足音を立てながら廊下の向こうへ歩いていった。 で、またも一人残されたシェゾは。 退屈しのぎに窓から景色を眺めはじめた。お外は真っ暗になってたけど、静かに揺れる海は月明かりと星明かりを受けて、波が寄せて引くたびにきらきら輝いてる。アルルに見せたら、すっごくきれいだね、って喜ぶかもしれない。 「……明日は、帰る前に少し遊んでくか」 銀の髪に海と同じ光を受けながら、シェゾは明日作る砂山の完成予想図を頭に浮かべた。
*朱桜より・・・*羽鳥さんから頂いたラブラブ小説vv
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