さくら



ある満月の晩。
眩しいほどの窓から差し込む月光でアルルは、目が覚めた。
「ん・・・眩しい・・・満月?」
カーバンクルを連れて夜の散歩に出かけようとしたが、 カーバンクルは、鼻ちょうちんを膨らませて爆睡していたのでほっておくことにした。
そしてそろりそろりと家を抜け出して夜の散歩に出かけるのだった。

外に出ると冷たい風に襲われる
「冷たっ」
いくら早春とはいっても、暦上はまだ冬。
冬の風は、まだまだ冷たいのである。
ぎゅっと手を握り締め、とある場所へ向かう。
とある場所とは、サクラの名所。
古く大きな木で、その地方では有名なサクラだが最近はそのサクラの木の根元へ行く人が少なくなって来ているそうだ。
理由は簡単に冬だから・・・
そしてもう一つの理由は・・・

目の前に広がるのは、サクラの木をバックに輝く満月
「うわぁ・・やっぱりここっていつ来ても綺麗だな〜」
目の前に広がる光景に感激し、アルルは歓声をあげる。
「お前・・・アルルか。何故ここにいる」
そしてそこに現れたのは闇の魔導師シェゾ・ウィグィィだった。
「げっ・・・出た変態!いつからそこに沸いてきたの?」
「オレは変態じゃねーーっ!だいたいお前の来る前からオレはここにいた」
シェゾは顔を真っ赤にして怒る
「へぇ〜それじゃ君もこのサクラを見に来たの?」
「サクラ?ずいぶん季節はずれな花見だな」
「なんで冬に花見なんかするんだよ」
「お前の場合、食べ物を食うイベントは季節が関係ないんじゃねーの?」
アルルは思い切りため息をついた。
「ボクは、このサクラの成長日記をつけてるの。」
「ふーん・・・でそれがどうした」
シェゾは興味なさそうに言う。
「今日の冷え込みはいつも以上に厳しいから、ボクは心配して来たの」
「それはそれはご苦労なことだな・・・だが心配はいらねぇと思うが」
「なんで?」
アルルは即座に反応する
「なんでって植物自体、見た目以上に生命力が強いんだよ。・・・お前みたいにな」
「えっ・・・今最後に何か言わなかった?」
「何も言ってねーよ」
心なしかシェゾの頬が赤い気がする。
「絶対何か言ったって・・・分かった」
「えっ・・・」
やっぱり聞こえたのかとドキドキするシェゾ
しかし、そんなシェゾの気持ちとは裏腹に返ってきた答えは・・・
「どーせ君のことだからお前が欲しい・・・でしょ?」
がくっ
思い切りシェゾはこけた。
「あれ違うの?おかしいな〜」
シェゾは呆れながら立ち上がった。
「んなわけねーだろ」
「それじゃなんて言ったのさ」
「なっ・・・////」
シェゾは再び頬を赤くする
「・・・まぁいっか、百歩譲ってお前が欲しいと言っていたと
いう事にしてあげるよ」
「全然嬉しくねぇし」

「あ・・・あれってサクラのつぼみだ〜」
「ん?・・・ああ確かにそうだな」
「あのつぼみたちってさ今必死に春になるのを待っているんだよね」
「まぁな。寒い冬を越えられないサクラは花を咲かせることが出来ないと言われている・・だからあいつらなりに頑張ってんだよ」
「そっか〜」
アルルは深く頷いた。
「お前もそいつらに負けないように頑張ったらどうだ?」
「頑張るって何を?」
「赤点のテストを平均点を取れるように頑張れってこと」
「なぜ・・・それを・・・(汗)」
「お前のことは有名なんだよ。・・・実技だけが良くてテストは毎回赤点の生徒がいるってな」
「ありゃりゃ・・・そんなに有名だったんだ(汗)」
「まぁせいぜい頑張ることだ・・・次のテストで頑張るんだったら良いものくれてやってもいいぜ」
「良いものって?」
「秘密」
「えーシェゾのケチ」
「うるせぇな」
「シェゾのケチ〜変態魔導師はケチ魔導師〜」
「・・・そんなに欲しいなら今くれてやってもいいが」
「えっほんと・・・って言うかそんなこと言ってボクに変なことする気でしょ」
「嫌だったら別にかまわねぇけど。もしそうだったら今回の話は無かったことにということになるが?」
・・・良いものってなんだろう。ううっヤバイ好奇心に負けそう
「ううっ・・・とりあえず君を信じることにするよ」
アルル結局好奇心に負けてしまった。
「んじゃ、目瞑れ」
「う、うん」
アルルが目を瞑ったのを確認すると、シェゾはアルルに近づいていった。
そして2つの影が重なり1つの影になる
アルルは自分の頬に柔らかいものが当たっていることに気付いた
「・・・っシェゾ何を・・・」
知らず知らずのうちに頬が赤く染まっていく
そっとシェゾは、アルルの頬から離れた
「顔赤いぞ」
「赤くなんてないもん」
「だいたいねぇどーせこんなことだろうと思ったよ」
「ふーん」

二人はそうして朝になるまで騒ぎ続けた・・・
夜中に騒いだ二人は次の日町の怪奇現象として噂となったそうだ。
サクラの木の近くで幽霊が出た・・・と。
その噂を聞いた二人は、お互いに顔を見合わせて微笑したというのは、また別の話




*朱桜より・・・*

パウルさんとこのサイトの「555」をゲットして、頂いた小説です。
リクエストは「シェアル早春バージョン」。ちょっと難しかったかな……とか思ってたんですが、見事に朱桜好みの作品を贈って下さいました。
本当に有難う御座います♪
桜をテーマにしたお話、大好きです。加えて甘いシェアルならもう文句なし!


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