「しかし、何だって……抑えられなくなったんだ……」
アルルが衣服を身に着けている間。
俺は、アルルに背を向けるようにして独り呟いた。
今までずっと抑え込んでこれたはずの欲望が、何故、今日に限って……。
カレーに何かが入っていた──?
一瞬、ふと疑惑が脳裏を掠めた。……が、あまりにも根拠がなさすぎて、すぐに否定する。
アルルに限って、……まさか、な。第一何のメリットもない。
──って事はやっぱ、欲求不満だったのか?
これじゃあ、ただの変態じゃねぇか。──あぁ、俺って一体……。
「シェゾ? ……どうしたの?」
アルルが苦悩する俺を覗き込む。
途端にさっきの情景を思い出してしまった。いかん、鼻血が出そうだ……。
「なっ。何でもねぇよ。……用意できたんなら、行くぞ」
誤魔化すように立ち上がる。自宅に送ると約束した為、アルルの肩を抱き寄せると、転移の魔導を唱え始めた。
「シェゾ。……ごめん、ね」
「?」
魔導が発動する瞬間。複雑な微笑みを浮かべ、アルルが俺を見上げて言った。
何の事かはよく解からないが……。
…………。
…………。
ま、いいか。深くは考えないでおこう。
そんな事よりも、それを呟いた時のアルルがあまりにも愛しくて、思わず俺はアルルを強く抱きしめてしまったのだが──。
「ぐーっっっ!!」
「うおわぁ!」
とっくにアルルの家に着いていたのを失念していた。
怒りまくったカーバンクルの光線が、見事に俺の後頭部を直撃していたのだ。
「だーっ!! 何しやがるっ」
「ぐっぐ、ぐーっ!」
「この、ヘンタイッ……だって」
小動物の言葉をわざわざアルルが訳した。……って。
「俺は、ヘンタイじゃ、ねぇ!」
アルルによると、うたた寝から目覚めると俺達の姿がなく、置いていかれた事にひどく立腹しているらしい。
「そんなの、俺のせいじゃねぇだろうが」
カーバンクルの耳を思い切り左右に伸ばしてやったら。
「…………んぐっ」
「?!」
──喰われた。
「わーっ。かーくんっ! だめだよ」
すぐにアルルがカーバンクルをひっぺがしたが、何でこの俺がこんな目に遭わねばならんのだ?
アルルの肩からなおも威嚇する小動物を忌々しく眺めながら、この落し前は飼い主の身体でつけさせてやろう、などと剣呑な事を思い巡らせていた。
後日談──
「あらぁ。シェゾさん……」
用があってウィッチの店に行った時の事。
何故だかウィッチの視線が煩わしかった。
意味ありげににやにやしながら俺を観察してやがる。
「んふふふ……ふふふ……」
「?」
何なんだ、一体。
・・・END・・・
*あとがき*
ちょっと、コメディ色が濃すぎるので、別枠での掲載です。(笑)
シェゾってどうゆう訳か、こういった扱いがよく似合う……と思うのは朱桜だけなんでしょうか?
シェゾファンの皆様、ごめんなさい。
アルルサイドのお話である「媚薬」とセットで、某サイト様に投稿させて頂いた小説です。 思えば、これらの小説を書いた事がきっかけでこうしてHPを開設する事になったんですよね。
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