花泥棒は 罪では無い、と誰かが言った。



花盗人



春の宵。桜が咲いている。
ダンジョン探索の帰り路、ふとした気紛れで テレポートを使わずに歩いていた俺は、それは見事な桜の老木を見つけた。
樹齢にして四百年か、五百年か…。
山深くにあるわけではなかったが、人里から離れたこの場所には 花見の客もやっては来てなかった。
「ほう。これはまた見事な……」
感嘆の声を上げながら 傍に寄る。俺しか知らないであろう 年老いた桜を愛でようと、その幹に手を触れようとしたその時
『……おい?!』
木の影に 誰かのいる気配を感じる。
しかも 出来れば会いたくは無い――この時間なら尚更だ――ヤツの気配、だ。
姥桜を愛でられないのは残念だったが、ここで“こいつ”に見つかる事は(はっきり言って)避けたい。
ゆっくり そっと離れようとしたその時、足元で パキ、と枯れ枝を踏んだ音が鳴る。
『ヤバい!』
と思った通り、その音に誘われる様に 木陰から“あいつ”が こちらを伺う。
「だれか いるのー?」
今まさに テレポートを唱えようとした瞬間 目と目が合い、“あいつ”の……アルルの能天気な声が 響き渡る。
「あー!へんたいだー!!」
「…っかましいわっ!誰が 変態だっ!!」
……あのまま テレポートを唱えられれば立派だったのだが、つい反論してしまっていた。…条件反射みたいなものなのか?もしかして…。
しかし、これで完全に ここから去る事は出来ない状態に陥ってしまった。
アルルは こちらを振り返ったままの姿で、俺に語り掛けてくる。
「ねー、どうしたのー?そんなところに つったってないで、こっちで ボクといっしょにお花見しよーよー」
「………」
正直 行きたくは無かったが、ここまで来て“嫌だ”とは 言えなかった。
それに。
……もしかしたら これは俺の気の所為なのかも 知れないのだが。
桜が…この老木が、俺に“ここにいてくれ”と 囁いた気がした。“いてくれたら、欲しいモノが手に入る様、お膳立てしてやるぞ”と。
そんな風に 伝えてきた、そんな気が、したのだ。
いつもなら “気の所為”と 気にも留めないのだが、今回のコレは 確信めいた予感で 俺の気持ちを縛り付けた。
テメェで思い付いた筈の“お膳立て”の言葉に 小馬鹿にされた様な不快感を持ち、それでも 己の予感と好奇心の力の方が勝ったのが判る。
『しゃあねぇ…乗ってやるよ、その誘いによ』
わざとに 苦笑を浮かべつつ、アルルの傍に歩み寄る。
「お前は 何やってんだ?」
「だからぁー、お花見」
「そうじゃなくて」
「?」
不思議そうに 俺を見るアルルに 言葉が足りな過ぎた、と気付く。言葉の外を気遣える様なら 俺に“変態”云々と言える訳が無いからな……。
「目立たない場所にあるココを わざわざ選んで花見するのは 酔狂じゃねぇか?と訊いてるんだ」
「んにゃあ?そお?人がこないから、ゆっくりみられるんだもん。ボクひとりのために さいてくれてるようで、うれしくてさー」
……何か 話し方がおかしい気がした。
怪訝に思いつつも アルルの横に辿り着き、そして そこで目にしたのは
「……お前…もしかして コレ全部…?」
「はにゃ?…うん、そうだよーv」
「…もう 出来上がってる、って事かよ…」
アルルの足元には、大量の 酒の空き瓶。多分 蒸留酒(スピリッツ)系の 相当強いヤツだろう。
本来、魔導師は 酒には強く出来ている。魔導酒やももも酒の類で鍛えられるからな。
その(はしくれとは言え)魔導師たるアルルが 出来上がっている、って事は、強いヤツを 相当量飲んでいる証拠だ。
「いつから飲んでるんだ?」
「えー?おつきさまが のぼりはじめたころからー」
今夜は満月。それが 相当高い位置まで昇っている。って事は、3〜4時間は飲み続けている、って訳か…。
「そろそろ止めとけ。一人で帰れなくなるぞ」
「んー、だぁいじょーぶだよー」
「どこが!…俺は送らんからな」
「へーきへーき。それより、しぇぞものむー?」
呂律の回らないしゃべりで それでも まだ飲もうとする辺り、ザルと言おうか ワクと言おうか……。
ま、俺の知った事じゃないから、無理には止めずに 振舞い酒の申し出は ありがたく受け取る。
「辛口なのよこせよ」
「はい、どーぞv」
酒瓶毎 俺に渡してくる。って事は
「これ、全部飲んで良い、って事か?」
「うん、そう。ボク、けっこうのんでるからねー。いっぽんくらい あげるよー」
桜を見上げながら、夢見心地の声で 呟く。
「そりゃ すまねぇな」
と 心にも無い礼を言う。
ちびりちびりと飲(や)りながら、ふ、と アルルを見やる。
酒の所為で上気した頬。潤んだ瞳。月明かりが、こいつの白い肌を 妖しくも可憐に照らす。
その瞬間。

『……っ?!』

ドクン、と 心臓が跳ね上がった気がした。無理に隠していた ほの昏い感情が、理性の箍を外す様に 俺に迫る。
『行き成り、何だ?こんな状況、今迄だって あったじゃねぇか…』
突然の 理性の緩みに、気が動転する。慌てて、無理矢理 理性に仕事をさせる。
冗談じゃ無い。今 こんな時に こんな所で外れたら、今迄の努力が 水の泡じゃねぇか!
なのに、追い打ちをかける様に アルルが俺に 寄り掛かって来る。
「んなっ?!何だ、急に?!重いだろーがっ!」
「ふにゃあ〜…。なんだか とっても きもちいいのぉ〜…」
ふにゃり、としな垂れかかるアルル。まるで 俺を誘う様に、金茶の瞳が 熱っぽく潤む。
半分 焦点の合わない目、とろける様な笑顔、酒の所為で火照った身体。
更に、俺の首に腕を回し ぐりぐりと 額を押し付けてくる。
「なっ…何やってんだ、お前はー?!」
「ふみゅう〜、あっついしー、ふわふわするのー」
「だ、だから、って、 何故こんな事しなけりゃ ならんのだっ?!」
「だぁってー、しぇぞ、つめたいんだもーん」
……火照った身体には、俺の体温ですら 低く感じ、心地良いらしい。
だから、と言って これでは誘っているのと同じだろう。その 余りの無防備さに、くらりと眩暈を起こす。
「アルル、冷たいのは判ったから、少し離れろ」
「え?なぁんでー?」
「何でも良い。離れろ、っての!」
「ぶー!そんな つめたいこと いわないでよー。そんなこというなら、もっと ぐりぐりしちゃうぞー!」
ぐりぐりぐり、と先程よりも より強く額を押し付けてくる。
『何だってんだ!お前はっ!!』
ほの昏い想いが 俺の劣情に囁きかける。理性の箍は 今にも外れそうだ。しかし、それは非常にヤバいだろう。
…それにしても、ここまで警戒心の無いヤツだったか?いや、こんな夜中に 一人でこんな所にいる段階で 無防備過ぎるのだが。
だが、俺に対して こんなに無防備を晒した事は無い。魔導力を狙われているのは 事実としてあるのだから。
こんなに 無防備に無邪気に懐く事の危険性は、こいつが一番知っている筈…なのに。
それに、さっきから感じる 俺の理性の危うさ。自分自身、こんなに自制心が無いとは考えられない、と言うか 考えたくない。
しかも、俺の中で 何かが箍を外そう、としている感じではなく、外から 無理矢理外される、そんな不快な感触がある。
でも 誰が?
その時 急に、桜の強烈な匂いが漂い始める。
と 同時に、ざわ、と 桜が“嗤”った…気がした。

『?!』

…は、ん……そう言う、事、か。
こいつが ここにいる偶然。俺が ここに来た偶然。逆手にとりやがったな。
はっきり言って 非常に不愉快だ。こんなくだらない手に 易々と乗せられてしまうとは、な。
だが しかし。
乗ったのは俺。乗ってしまった以上 この呪縛からは逃れられないだろうから。それなら 素直に乗った方が良い。
アルルの方は、乗せられた自覚など無い筈だ。都合は良いがな。
桜の意図は 今時点では判らないが、その申し出には ありがたく乗せられてやる。

「アルル」
「なぁに…っ…?!」
アルルに気付かれない様に 魔法を封印する呪文を唱えた後、ずっと 俺に引っ付いていたアルルの唇を 俺のそれで塞ぐ。
行き成りの事で 何が起きたのか良く判らず、抵抗する事すら忘れているアルルに、尚も深く執拗に。
舌が絡まった瞬間、やっと自分の身の上に起こった事を理解したアルルが、慌てた様に 暴れ始める。
その振り回す腕に構わず キスしたまま押し倒し、服の中に手を入れ 脇腹をなで上げる。
「!んん、ぅっ!」
唇を塞がれたまま、それでもアルルは身を捩る。
その動きすら封じる様に、俺の身体で彼女の身体を押さえつける。
「んん…っ…んく…ぅ」
唇を封じられ、動きを抑えられ、行き場を失った悲鳴が 咽喉の奥で鳴る。
ぞくり、とする程 隠微なその反応。
唇を解放し、呟く。
「お前が 悪いんだからな……」
「な…なにが?!なんで きゅうに こんなこと…っ!」
「お前が こんな所にいるからだ」
「えぇっ?!そ、そんなのヘンなリクツだよっ!アイスっ!!」
呪文は 完成を見ないまま、空しく木霊する。
「な、っ!どーしてっ?!」
「……魔導師ヤるのに、魔法封印しない訳無いだろう?…諦めろ」
「そ、んな…!やだ、やめてよっ!!」
その言葉を まるで無視して、そのまま 首筋に舌を這わせる。
アルルの身体が びくり!と震え、少し上ずった声で 拒絶の声を絞り出す。
「い…やっ!やだ、やめて…っ!」
鼻で嗤いながら 言ってやる。
「ふん。そっちが先に 吹っ掛けてきた癖に?」
「な、ん…ぅひゃぁんっ!」
もう一度 首筋を舐め上げ、耳朶を甘く噛む。
小さな悲鳴を上げながら、それでも 逃れようと暴れる その細い身体。
片手で抑えつける。力の差を見せ付ける様に。
アルルが泣きそうな声で懇願する。
「っ……やっ……も、やめ…っ……お、ねが……っ」
一言の元に 切り捨ててやる。
「誘ったのは、お前だろ……」
「!!……そ……そんな……つもり……」
……そんなつもりなど 無かったのは本当だろう。酔った上に 桜の邪気に中てられて、我を失っていたのだから。
だが、もうそんな事など関係無い。誘われたのは 事実として俺の中に残っている。
そう。

「どっちにしたって、もう手遅れなんだよ」

まどろっこしい、とばかりに、服を引き裂く。
「いやあぁぁっ!!」
布を裂く音と アルルの悲鳴が重なる。
露わになった胸元に 唇を滑らせていく。
鎖骨に 舌を這わせ、咽喉元に 音を立ててキスをし、そのまま唇を 真っ直ぐ下降させ、下着にぶつかった所で きつく吸い付き 華を咲かせる。
「ひゃ…あぁっ!」
アルルの身体が びくん!としなる。
それでも次の瞬間
「や、だ……っ!やめて…ぇっ…!」
渾身の力を込めて 俺を押し返す。その 不意の動きで、一瞬 俺に隙が出来る。
その隙を突く様に、アルルが 俺の下から逃れようと這い出す。
が、出来た反撃は ここまでだった。酔った身体は 思う様に動かない。
立ち上がろうと 後ろを向いた瞬間、彼女の腰に左手を回し、右手でブラのホックを外す。ついでに、スカートのホックを外し ファスナーも 下ろしてしまう。
「あ、っ!」
慌てて 胸を隠す様に 腕で押さえるが、その動きには構わずに そのまま 背骨に沿って、ゆっくりと舐め上げていく。
「や、あぁんっ!」
甘い悲鳴を上げつつ 背を反らせ、胸を守っていた両腕を 無防備に外す。
その機会を逃さずに、右手を滑り込ませ 胸の蕾を弄ぶ。
「やぁんっ!そ、んなの…っふぅんっ!」
胸の蕾は 俺の動きに 如実に反応し、硬く膨んでいく。
「はん。こんなに硬くしといて どこが嫌だって?」
腰を支えていた左手も、身体の線をなで上げつつ 空いた胸の蕾に持っていく。
「こっちも こんなに硬く膨らませて…」
軽く摘み、捻ってやる。
「あ、あ、あぁんっ!」
声が甘く濡れていく。その幼くも 切ない喘ぎに ぞくりとする。
耳に舌を這わせ、囁く。
「もっと 悦ばせてやるよ…」
「や…っ!」
もう一度 仰向けに押し倒し、キスをする。抵抗する力が消えるまで 深く執拗に。
暴れる腕が 段々と弱くなり、ついには 俺の腕を 震えながら掴むまでになった頃、漸く 解放する。
細く引く糸を舐め取りながら アルルの様子を見やる。
喘ぎながら カタカタと震える身体。酒の所為か 感情の高ぶりか、潤んだ瞳は とろんと宙を彷徨っている。
桜の匂いが 甘くきつく漂い、それと一緒に 花びらが降り注ぐ。
白い肌に降る 桜色。胸に膨らむ蕾よりも 若干薄い花びらの色。
その花びらに誘われる様に、俺の華を咲かせていく。
花びらが落ちた横に きつく吸い付く。落ちる花びらと競う様に 次々と咲いていく 紅い“華”
紅く華が咲く度に、アルルの喘ぎが甘く大きくなる。
桜でも無く、俺の“華”でも無い、アルルの胸で膨らむ薄紅梅の蕾。
右手で優しく転がしつつ、もう一方には舌を這わせる。
「あぁぁん!やぁ…んっ!」
「やぁ、じゃねぇだろ?“イイ”んだろう?」
「ち、がっ…やぁ…っ!」
酒で より過敏になった身体を攻め立てて。
指で弄んでいた方は摘み上げ、舌先でいじっていた方は 押し潰す様に刺激する。
それぞれを 違った刺激で攻められ、幼い身体がついていけずに びくんびくんと震え続ける。
「あっ、あっ、やっ…はぁぁん…っ」
涙を浮かべながら 喘ぐアルルに、女の色香を感じ ゾクゾクする。
摘み上げた蕾を捻って より強い刺激を与える。
「あっ…ふうぅぅぅんっ!」
「結構 可愛い声で啼くんだな」
舌で弄んでいた方は、甘く噛んで 小さな余韻を残す。
その微妙な動きにも耐え切れずに、アルルの身体が 跳ね上がる。
「やっ、だぁ…んふぅ!」
「その声、もっと 聞かせろよ…」
胸の蕾から手を外し、徐々に下降させて行く。
つい先程 縛めを解いたスカートは、膝の辺りで 辛うじて引っ掛かり絡まっていた。
何の用も成さなくなったそれを抜き取り、膝の辺りから 太腿の内側を ゆっくりなぞり上げていく。
「あぁっ…んんぅっ!」
「随分 感度良く仕上がってんだな。ま、愉しみが増えた、って事だな」
焦らす様に上がっていた指は、アルルの中心へと向かう。
指先が そこに そ、と触れた瞬間、身体をずり上がらせ 拒絶の悲鳴を上げる。
「いやっ!やめて!さわんないでよぅっ!!」
「あん?“触んないで”?…こんなに濡らしといて 良く言うよ」
下着の上から わざと乱暴に指を滑らせ、くちゅっ、と鳴る 粘着質の卑猥な音を聞かせる。
「判るか?身体は正直なんだよ」
「そ、んなの…ちがう、もん…っ…」
その音に 顔を赤らめながら、アルルは否定する。
「何が どう違うんだ?言ってみろよ、ん?」
下着の隙間から 指を忍ばせ、その中心の“蕾”をなで上げる。
「ああっ!!だめぇ…っ!そ、こはぁ…っ…」
「ん?ココがイイ、ってか?」
軽く指先で叩く様にし、ぴちゃぴちゃと いやらしい水音を立ててやる。
「凄いな、お前。これだけで もうこんなにして。……もっと悦ばせてやろうか?」
「ひゃ、ん…?……!!いやぁっ!そ、んなぁ!だめぇっ!!」
最後まで残っていた 下着を取り去り、一糸纏わぬ姿にさせる。と 同時に、アルルの膝の裏側を持ち、大きく開脚させる。
全身を赤らめたアルルが、啜り泣きながら懇願する。
「やだ、やだ…っ。み、ないで、ぇ…」
残酷に言い捨ててやる。
「残念だな。もう遅い。さて…じっくりと 遊ばせてもらうとするかな」
その中心の蕾は 色濃く脈打ち、大量に甘い蜜を零している。羞恥を煽る様に じっくりと見つめる。
視線が判るのか、アルルは顔を手で覆いながら 小さな声で いやだ、と 見ないで、だけを繰り返し呟く。
その声を無視し、甘い匂いに惹きつけられる様に、舌で蜜を掬い取る。
「や…っ!あぁ…っはぁ…っんっ!」
「舐めても舐めても溢れてくるな。そんなにイイんだ?」
「やぁ…っん。よ、くな…ああぁっ!」
拒否の声は、俺の動きで 封じ込められる。
入り口を 焦らす様に舐め上げ、その中心の最も敏感な花芯を突き、舌を差し入れ 内側を弄ぶ。
「ああぁぁぁっ!ぅふぅ…んっ!」
「ほら、イイんだろ?」
「…やぁぁ…っん!」
腰を跳ね上げながら それでもまだ拒否の声を出そうとする。
その強情さが 昏い悦びを煽るのを、幼い彼女は気付かない。
「は、ん。お前のココは こんなに悦んでるのに?」
指を一本 第二関節まで沈める。
「いやぁっ!い、たいっ!!」
瞬間、アルルの身体が硬くなる。まだ処女だったか、と 別の愉しみも同時に手に入れる。
「ふん。初めてだったか。…まぁ、教えてやるさ。じっくりと、な」
舌先で花芯を慰めながら、指をゆっくりと動かし 解していく。
「はぁぁんっ…ふっ…」
解した所で もう一本、更に一本、と指の数を増やしていく。
ぬちゅぬちゅと 彼女の蜜が絡みつき、卑猥な音を立てる。舌を外し、耳元で囁いてやる。
「イイんだろ?隠すなよ。結構淫乱だったんだな」
「ちが…っ…やぁだ、もんっ…!」
「指三本も飲み込んでんのに?」
軽く指を捻る。彼女自身が きゅ、と締まり、とろり と濃い蜜が溢れてくる。
「ひゃあぁぁん!ん、あぁっ!」
「“イイ”んだろ?正直になった方が 楽だぞ」
「は、あ、やあぁ…っ」
もう甘く喘ぐ事しか出来なくなっているアルルを、更に激しく攻めていく。
指を蠢かし、もう一方の手で 胸の蕾を弄び、耳朶を舌と唇で嬲ってやる。より激しく、より執拗に。
「ああぁんっ!ひゃあんっ、んくっ!ふ……い…っ」
散々攻められた幼い身体は、もう啼き声さえも 発する事が出来なくなって来ている。
喘ぎながら涙を浮かべ、それでも俺を押し留めようと、震える声で囁きかけてくる。
「お、ねが、い…もう、やめて…」
しかし、その甘く濡れた声に 逆に“女”を感じ、ぞくり、と背中に 悪寒に似た“何か”が駆け上がっていく。
「しぇ、ぞ…も、たすけ……っ」
焦点の合わない 潤んだ瞳、興奮に紅く染まる白い肌、吐く息は 既に上がっている。暴れた身体には酒が回り、過敏な感覚をより鋭敏にする。
桜の花びらが 降り注ぐ。薄い桜色から紅まで、アルルの肌に 無数の華が咲き誇る。それは今まさに 綻ぶ瞬間に似て。
その時 不意に
“そういえば、咲く瞬間の蕾が 一番香りがきつい、と聞いた事があったな”
と、思い出す。
…それで 言うなら、俺の下で 甘い声で啼いているこいつは、さしづめ“咲く瞬間の可憐な蕾”ってトコ、か。
今まさに 俺が“咲かそう”としている華。俺の手によって、俺に翻弄されつつ 綻ぶ蕾。
俺だけが 咲く瞬間に立ち会え、なのに 咲いた瞬間に 手折ってしまう 俺だけの 甘い“華”
独占的な響きは 俺を非常に満足させる。
「ふん。助けてやるよ、望み通りに、な」
そのまま アルルの右足を肩にかけ、左足は 俺の腰に回す。身長差で アルルの腰は軽く浮き上がる。
そのまま 彼女の中に、ゆっくりと俺自身を埋めて行く。
俺の科白に 少し安堵したような表情を浮かべたアルルは、“助ける”の意味を悟り 恐怖に目を見開く。
「いや…っ!ちが…・・・ぅ、こ、わいっ…!!」
「“助けて”欲しいんだろう?」
「!やぁ…っ!」
更に進める。と、ある一点で 軽い抵抗を感じ、と同時に、アルルの身体が 瞬時に硬くなる。
「あ、ひっ…い、たいよ…もうやだ…っ…」
恐怖に震え、痛みに掠れる声。
流石に 可哀想になり、ゆっくり優しく なるべく痛まない様に進めようか?と考えた矢先、桜の匂いが 辺りに強く漂う。
まるで そんな考えを吹き飛ばす様に。
さっさとモノにしてしまえ、と言わんばかりに 俺を煽る甘い香り。
“まるで 麻薬の様だな”と ぼんやりと考え、しかし その匂いに抵抗出来る筈も無い。
一度 腰を引き、一言呟く。
「悪いな。もう止まらん」
そして力をかける、その一点に集中する様に。俺の体重で 最後の抵抗を打ち破る。
「…!!っいっ!……たぁ…ぃ…っ!」
余りの 衝撃と痛みに 掠れる悲鳴。潤んでいた瞳からは 涙が溢れ出し、血の匂いが鼻をつく。
その瞬間
『―――?!』
桜が――まるで 喜びに震える様に――枝を揺らし、それと同時に 益々甘い香りが広がる。
『…ふん……麻薬、と言うよりは 媚薬、だな』
桜を横目で見やりながら 腰を動かす。
「ぅあ…っ!いぁ…っ、うっ…くっ…!」
痛みに 声を上げながら アルルの手が空(くう)を掻く。
予想はついたが、その手を 俺の肩に置いてやり、更に揺さぶる。
「くぅっ……ふ!」
案の定、痛みを逃すかの様に 有りっ丈の力で 俺の肩を掴む。爪が食い込んだ瞬間、小さな痛みと 軽い疼きを覚える。
「…ってぇだろう?爪立てるんじゃねぇよ」
更に攻め立てる。爪を立てた罰の様に。俺が手を置き、俺が誘い、そして それに乗ったと言って 罰を与える。
これほど 理不尽な事は無いだろうが、抵抗出来ないアルルは 良い様に 弄ばれる。
突く度に 痛みに震え 鮮血が零れる。それを受ける度 桜は 枝を震わせる。
『出歯亀たぁ 良い趣味だよな』
そう思いながら、それでも ここで止められはしない。
「もう少し力を抜け。ヤり辛い」
そう言いながら 唇を塞ぐ。声を閉じ込める様に。きつい身体を 無理矢理揺さぶる。
「んん…っ!んんん、っ、んっ!!」
唇を塞がれたアルルは それでも声を上げる。
涙は止まらず、締め付けも収まらない。零れる蜜には 相変わらず血が混じる。
それでも 構わずに 散々突いてやる。と。
アルルの身体が ぴくん、と震え、きつかった身体が ほんの少し柔らかく解れる。
唇を解放し、確かめる様に 揺すってやると。
「ん、ふぁっ!ああ、んっ!」
掠れた声が 熱を帯びていく。桜とは違う甘い香りが 俺の周りに充満する。
「ふ、ん。“イイ”んだろ?」
「や…ぁんっ!ちが…っ、あぅん!」
「そうやって いつまで強情張ってられるかな?」
「ひぁっ!あ、ああんっ!んん…っふ!」
散々揺さぶる、アルルの身体を。突き上げる、それが快楽と同義に変わったのを知って。滅茶苦茶に弄ぶ。“男”を知った彼女が 切なく甘い声で啼く。
「は、ああぁぁんっ!んふぅ、っ…ふうぅぅんっ!」
「身体は 正直なモンだな。こんなに悦んでるじゃねぇか」
より深く、より乱暴に侵食する。
「!はああぁぁんっ!あ、あ、ああぁぁっ!!」
アルルの腰が びくん!と 跳ね上がる。片手で抑え、更に 奥へと突き入れる。その度に、アルルの腰は 跳ね上がる。
「…これでも まだ いやだ、って言い張るのか?ん?」
最深へと突いた後、ぐり、と腰を回す。
「ひゃあぁぁんっ!そ、な…ああっ!」
強すぎる快楽。初めての身体は どうする事も出来ずに 只嬲られ続ける。
いつの間にか 肩に置かれていた手は 背中に回り、俺にしがみ付く形になっていた。
「イイんだろ?しがみ付かなけりゃ ならん程に。いい加減 素直になれよ」
「いぁ…っ!こんな…ちが、うっ!」
「随分と 強情だったんだな…。ま、良いさ。身体の方は 充分素直だからな」
尚も激しく揺さぶって。綻ぶ蕾から 蜜が大量に零れ、俺に絡まり 卑猥な音を立てる。
「やぁ…っふ!あふ、っん!」
「やぁ、じゃねぇって、イイんだろ?口も正直になれよ。却って辛いだろ、あん?」
「やぁ、っ!や、ちが、う、もんっ…ちが、ああっ!」
「ふん、どこが やぁ、だって?」
散々弄んだ身体は 小さな動きにすら反応する。小さく痙攣しながら 喘ぐ姿。更に攻め立てる。
「ああぁぁぁっ!んふぅ…ああっ!」
溢れる涙は 頬を濡らし、幾筋もの跡をつける。俺を締め付ける蕾は 激しく脈を打ち始める。
「あ、あっ、も、っ…ヘン、やっ…あ!あぅっ!」
「何だかんだ 言いながら、イきそうだ、ってか?……安心しろ、イかせてやるよ、何度だってな」
「!イ……ああぅんっ!あ、ああんっ!はぁぁんっ!」
滅茶苦茶に 掻き回してやる。腰が跳ね上がる所を 重点的に攻め立てて。
「あんっ!ひゃあぁん、も、やっ……あふぅっ!」
「足りないのか?もっと欲しい、ってか?」
「そ、なこと、いってな……あ、ああっ!」
「素直にイっておけ。我慢したって 良い事無いぞ」
更に激しく突き上げて。嬲り続ける、俺の気が済むまで。アルルが淫れ、可憐な華を咲かせるまで、存分に弄ぶ。
「あ、ああっ!やんっ、や、っ!も、や…!あ、ああぁぁぁんっ!!」
激しい動き、受け流す事も出来ずに 只素直に追い詰められた 幼い身体。ヒクつく蕾、痙攣する身体、しがみ付く腕、俺の下で可憐に咲き誇る 俺だけの“華”
その姿を 視界に捉えただけで 俺自身も頂点に昇りつめる。
「!く……っ!」
甘く咲き乱れた瞬間に 手折ってしまう。俺だけのモノだ、と言う証に。
「ひっ!いや、あぁ……っ!」
初めての感触に、悲鳴を上げ、身を捩り、ひくっ、と震える。咲く事と汚される事は 同義。
自分の熱から解放され、一息ついた瞬間にもたらされた 別種の陵辱。
ギリギリで保たれていたであろう 彼女の意識は、俺の欲望を飲み込んだ瞬間 自分の仕事を放棄し、“主”を暗い闇に放り込んだ―――


散々啼かされ 甘く溶けた身体は、桜の傍で くたり、と その身を投げ出している。
涙の跡が 頬に残り、首筋や胸元には 俺が刻んだ 華が咲き誇る。
眠る――と言うか 気を失う――アルルに マントをかけ、桜から その可憐な肢体を隠す。
そのまま ローブを羽織り、桜の根元から“ヤツ”を見上げる。
『貴様は これが欲しかったんだな』
桜に そう“語りかける”と、嗤う様に 枝が揺れ、肯定する様に 花びらを散らす。
『それにしても 悪趣味なヤツだぜ』
どれだけの魔力があるのかは知らないが、確かに篭ってそうな気にさせる。
『初めて“男”を知った証の鮮血、か』
一生に一度、しかも 確実に流れるとは限らない“女”になった証拠。
処女の生き血よりも 希少価値はあるだろうさ。それを手に入れる為に ここまでお膳立てした、ってぇのか。
確かめる様に嗤ってやると、ヤツも さも可笑しそうに応える。
『確かに、並みの女よりも 魔力はあるぜ。なんてったって、この俺が狙った女だからな』
桜は 可笑しそうに いつまでも嗤っている。
『…まぁ、俺も結構愉しませて貰ったからな。予定とは 違う形で手に入れちまったが』
それでも 抱きたかったのは本心だから。
『貴様には 礼を言わなけりゃなぁ……』
俺は闇の剣を取り出すと、桜に切り付けた。
突然の動きに“何故?”と言わんばかりに 枝を震わす。
『確かに 予定外とは言え、アルルを手に入れる為の 膳を整えてくれた事には 感謝してやる。
だがなぁ……俺が 貴様如きに操られ、挙句の果てに アルルの“血”を飲み込む手伝いをさせられる、なんざぁ、この上も無く不愉快なんだよっ!』
傷付いた幹から、紅い樹液が流れ出る。
『は、ん。人間の生き血を飲むと 流れるモンまで血に変わるんだな』
その 傷口に触れ、呪文を唱える。
桜が 事態を飲み込み、逃げようと無駄な努力をし始める。枝を震わせ、幹を捩る様に 反らせ……様とした。
『無駄だ……精々 大切に使ってやるさ…“バーニング・ルアクウォイド・ダグアガイザン!”』
桜が 数百年かけて溜め込んだ 魔力を奪う。
悲鳴を上げる様に枝が揺れ、涙の様に“血”の樹液を流す。懺悔の様に 舞い散る花びら。
懺悔の花びらを受けながら、最後の一滴も逃さぬ様に 幹に触れ続ける。
最後まで抵抗していた魔力を吸い取り、その手に何も感じなくなった時に 漸く離す。
『ふん。植物の割には 結構な魔力じゃねぇか。あと二〜三百年もしたら “人間”になれてたかもな』
嘲笑いながら、軽く その幹を押す。
刹那、全ての魔力を取られ 立ち枯れた枝から ざぁっ、と花びらが降り注ぐ。
『最期に 一花咲かせられて 良かったじゃねぇかよ、なぁ?』
用の済んだ 桜から離れ、アルルの傍に歩み寄る。
そ、と抱きかかえ、涙の跡を消す様に 舌で頬を拭い、そのままテレポートを唱える。
原因が アレとはいえ、こいつは既に 俺のモノ。折角手に入れたのだから。やっと手に入ったのだから。

『安心しろ。もう無茶はしねぇさ。信用するかどうかはお前の勝手だが。
だがな……手放す事だけは 絶対にしねぇからな。それだけは 覚悟しておけよ…?』


花泥棒は 罪では無い、と誰かが言った。
そうならば。
人を謀った桜を枯らし、可憐な華を手折った事は 罪の欠片も無いだろう?


今宵、俺だけの華を手折り 手に入れる、それは花盗人の業―――


・・・END・・・


*朱桜より・・・*

大鷹海凪さんから頂いた小説♪同タイトルのイラストのイメージ小説との事です。
こんなステキな小説に仕上げて頂けて、ホント、嬉しい限りです。
独りでひっそりと楽しむにはあまりにももったいないため、ここにひっそりとUPさせて頂きました。
ふふふ……皆さんも朱桜と一緒に楽しみましょうvv(怪しいって)



大鷹海凪さんのHPはこちら→金烏玉兎


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